クールな外科医のイジワルな溺愛
「ま、お互い仕事中だものね」
ぼそりと独り言を零す。あっちだって業務時間内に、他の人もいる前で気まずくなるようなことは言ってこないだろう。
緊張をほぐすため、腹式呼吸しながら営業部へ向かう。もう松葉杖は使わない。階段などは辛いけど、普通に歩くくらいなら、左足で庇いながらだけどできるようになっていた。
書類の入っているファイルを片手に営業部のあるフロアにエレベーターで上がり、廊下を歩く。
足元は相変わらずスニーカーで、わずかに片足を引きずっているせいか、すれ違う社員にちらちらと見られているような気がした。
営業部について大きく重いドアノブをつかんだとき、そっと後ろから手を差し伸べられて驚く。大きな手が私の後ろからドアノブをつかみ、押してくれた。きっと私の足が悪いと思って、誰かが助けてくれたんだ。
「あ、ありがとうござ……」
お礼を言おうとして、フリーズしてしまう。そこに立っていたのは司だった。
「営業部に用事?」
平静な表情でたずねてくる。
「う、うん……この書類を部長さんに」
「渡しておけばいいのか」
私からファイルを奪うと、司はドアを閉めてしまう。
渡しておいてくれるってこと……だよね? もしかして怒ってるのかな。早く経理部に帰れってことかも。ドア閉められちゃったし。
任務は遂行したし、いいか。このまま戻っちゃおう。
そう思って踵を返すと。