愛され過ぎて…ちょっと引いてます
「好きですよ」

その答えを聞いた瞬間、副社長はパッと瞳を見開いた。

それはそれは驚いたように。

私はそんな副社長の顔を見ながら、もう一度言葉にする。

イタズラ心を交えて。

「副社長のこと好きですよ。じょっ...」

その先に『上司として』と付け加えようとしたところで、副社長の大きな手のひらで口を押さえられた。

ビックリして身を引くと、「その先はいらない!」と眉間にシワを寄せて言った。

そして瞳を閉じて深いため息をつく。

それからゆっくりと瞳を開けて、強い眼差しで見つめてきた。

「私は君にとって上司だが、好きというセリフは男として言って欲しい」

ジッと見てくるその瞳は、初対面の時のようには恐くない。

だってその瞳は言葉を語り、副社長の気持ちがダイレクトに伝わってくるから。 

私の口を覆っていた手のひらは、そっと動き頬を包んだ。

「恵、好きだ」

そして初めてハッキリと気持ちを言ってくれた。

「私を好きになってくれ。私だけを見てくれ」

そう言って顔を寄せ、頬に優しいキスをした。

そして、私を見つめて答えを求めてくる。

 ー今....キスした..ー

頬に残る感触が、熱を心まで届ける。

私は...私の気持ちは。

自分でももう分かっている。

 ー私は....副社長のことが...好きー

そう胸の内で告白する。

「はい」

自然と了解の返事をしてしまった。

こんな庶民でまだ何もできない私が...。

いいのかな?なんて迷っていると、副社長はどんどんご機嫌な顔になり、笑顔でしばらく私の顔を見つめた。

その上、「恵、キスしてもいい?」と副社長らしくもなく確認してきた。

「今したじゃないですか」

「頬じゃなくて唇に」

言いながら唇を親指で優しく撫でてきた。

今までそんな経験はなかったけれど、不思議な気持ちになってくる。

それを断ち切るように、唇を撫でる副社長の手を両手でグッと押し戻す。

「ダメです!ここを何処だと思っているんですか」

「会社だよ。でも私の部屋だ」

咎めても堂々と居直ってしまう。

「でも、まだ...ダメです」

「ダメじゃない。もう嫌って程待った。充分我慢してきた。もう時間切れ」

いい大人なのに、子供みたいなことを言う。

何だか可笑しくなって、つい笑ってしまった。

すると副社長も笑みを見せて、私の身体を引き寄せて抱きしめた。

「なあ.…いいだろう?」

耳に唇を寄せて囁かれると、それ以上反発できない。

「...はい」

私が答えると、耳から頬へ滑った唇は、一瞬離れてから唇に触れるような優しいキスをした。

 -キスって....気持ちいいんだ...ー

その甘いキスはあっという間に深いキスに代わっていく。

上唇、下唇と食まれながら、抱きしめられる力が強くなっていくのを感じる。

私にはまだ刺激の強すぎるキスを....。

合間合間に「...け..い」と途切れ途切れに私の名を呼ぶ副社長。

その色気に、私はただただされるがままになる。

もう私には何もできないくて、私の両手はひたすら副社長の腕をギュッと掴み続けた。

だって恋愛経験のない私には返す術がないのだ。

だからどんどんどんどん副社長の熱に流される。

そんな中、私は心で思う。

 ー副社長...ごめんなさい。好きなんです。好きなんですけど....愛されすぎて...引いてますー

 ーでも、ほんのちょっとだけですよー

そんなことを思いながらも、私はこんな副社長のことが愛しいと感じてしまっている。
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