お見合い相手は、アノ声を知る人
お金も持ち合わせてなくて、逃げ出そうにも逃げれなくて弱ってた。
そこに来たのが彼と彼の祖父で、その偶然さに驚いたくらいだ。


「俺、あの場所で明里を見た瞬間、最初はゾクッと寒気の様なものを感じたんだ。
偶然と言うよりかは、先祖の導きのようなものを感じて……」


「私も同じようにゾッとしたよ。だって、貴方は私の秘密を知ってる人だったから」


二人で顔を見合わせ、あの日のことを思い出した。


「……この出会いは奇跡かな。…そう思ったから、今回ここへ参ろうと決めた」


立ち上がった彼が私の手を取り立ち上がらせてくれる。
そのままぎゅっと握りしめ、真っ直ぐと私を見てから言った。


「最初は多分、あまりの心細そうな明里の様子に同情心みたいなものが湧いたんだと思う。
だけど、ここ数週間ずっと見てて、結婚するならこいつがいいかも…と思いだした。

ジジイが見せてくれたファイルの内容を読んで明里をいいように扱った男が憎らしくて、思わず首筋に跡を残すくらい感情が高まってた。
……お陰で昨夜も、それを抑えるのが必死だったくらいだ」


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