お見合い相手は、アノ声を知る人
こうして手の中に入れておきたい。
胸の中に閉じ込めて、誰にも触れさせたくないんだ。

これが恋だと言われたら、そうなのかもな…と思うくらい、明里のことが気になる!」


だから離れるなと言って、更に力を込める。
その温もりが深過ぎて、自分には勿体無いと思うけど逃げれなくて……。



「……どうして、そこまで……」


零れ落ちてくる涙を流したまま聞いた。


「分からない。何でだろう」


困惑しきった彼の言葉に嘘はないと思った。
傷付いて疲れきってた気持ちに寄り添おうとしてくれる。


これがホントの彼なんだ。
深くて優しい、口先だけの人じゃない人ーーー。


「…もしも、私が離したくないと言い出したらどうするの?その時、もしかしたら自分は離れたいと思い始めるてるかもよ?」


それなら今直ぐ解放して、と願いたい。
誰かに捨てられるのは、一度だけでいいから。


「大丈夫。それはきっとない気がする」


「どうして!?」


顔を上げて聞き返すと、彼は少し腕の力を緩めた。
視線を真っ直ぐ私に落とし、ふわっと優しい顔をして笑った。


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