お見合い相手は、アノ声を知る人
立ち上がると洋室の方にある浴室へ向かう。
どれどれ…と思わず後を追いかけた。



「わぁ、ホントだ」


檜風呂の浴室から外に出るドアがあり、それを開くとジャグジーバスがあった。


「贅沢〜〜」


「本当。勿体無い感じだな」


二人で繁々と眺め、海が見えるね…と言うと背中から、ああ…と彼が囁き……。


ドキンと胸が弾んでしまった。
息が耳朶に掛かるほど近くにいたから。


振り返るのも躊躇われて足を露天風呂の方へ進めた。
お風呂の上には庇があって、雨も降り込まないように工夫されてる。


「入るか?」


「えっ…」


ビクッと肩を竦めて振り返ると、お湯を入れようかと聞いてきた。


「雨に降られたし、明里が先に入ればいい」


バスタブに栓をして、蛇口を捻る。


「私は別に後でもいいから小早川さんが先に入れば?」


「俺は後でいいよ。風邪引かれても困るし、明里が先にどうぞ」


「う、うん…じゃあ…」


そう言ったものの自分が先に入るなんて緊張する。
山根さんが部屋に来てた時は、一緒にシャワーを浴びるのも平気だったのに。


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