お見合い相手は、アノ声を知る人
『江戸の頃の話じゃ。月野の土地を管理しておった武士の小早川直行様には、最愛の妻が一人おった。
色白で美しい奥方様じゃったが、体が弱く、なかなかお子を望めなんだ。
それでもご当主はたいそう奥方様を可愛がり、愛しんでおられたそうじゃ』
見たことも会ったこともない二人の話。
何故か山根さん夫婦と重ねてしまい、キュン…と胸が切なくなった。
『……とある夏の日、偶然にもお子を授かった奥方様は、出産の時を迎えておった。
満月の夜で、寝所は明るく照らされておった。
しかし、ご当主の直行様は複雑な顔行きじゃった。
医師から「奥方様は難産になるだろう」と聞かされておったからじゃ。
予言通り、陣痛がきてもなかなかお子は生まれず、上り始めた月が空の真上にきても、ようやく頭が見え始めたばかり。
「産み落とされるまでにはまだ時間が掛かりそうじゃが、このままでは奥方様の命も危ない」
どうしたものかと医師も産婆も困っていたところ、奥方様は最後の力を振り絞るようにしてお子を産み落とされた。
産声も上げずにいる我が子を必死で産み落としたのはいいが、意識も朦朧としておった。
色白で美しい奥方様じゃったが、体が弱く、なかなかお子を望めなんだ。
それでもご当主はたいそう奥方様を可愛がり、愛しんでおられたそうじゃ』
見たことも会ったこともない二人の話。
何故か山根さん夫婦と重ねてしまい、キュン…と胸が切なくなった。
『……とある夏の日、偶然にもお子を授かった奥方様は、出産の時を迎えておった。
満月の夜で、寝所は明るく照らされておった。
しかし、ご当主の直行様は複雑な顔行きじゃった。
医師から「奥方様は難産になるだろう」と聞かされておったからじゃ。
予言通り、陣痛がきてもなかなかお子は生まれず、上り始めた月が空の真上にきても、ようやく頭が見え始めたばかり。
「産み落とされるまでにはまだ時間が掛かりそうじゃが、このままでは奥方様の命も危ない」
どうしたものかと医師も産婆も困っていたところ、奥方様は最後の力を振り絞るようにしてお子を産み落とされた。
産声も上げずにいる我が子を必死で産み落としたのはいいが、意識も朦朧としておった。