お見合い相手は、アノ声を知る人
「俺はジジイが望む家に婿養子に入れと言われて育ったんだ。だから、他の人とじゃ意味がない」


「どうして!?」


「厄介だけど、ジジイの意思が鋼鉄みたいに硬いんだ。言い出したら聞かないし、それは家族も全員諦めてる」


「自分も諦めてるから私とお見合いして婿養子にでも入ろうと思ったの?」


いつ時代の話よ。


「別に諦めてるから婿養子に入ろうと思った訳じゃない。あんたの家とは縁続きではあるし、全くの他人ではない気がしてるからいいと思っただけだ」


「はあぁ?」


何代も前のご先祖様が異母兄弟だった…ってだけのことだよね。
しかも、血は混ざり合ってて、全くの他人に近いくらいの感じじゃん。


「うちでは月野家は代々特別な存在として崇められてて、そんな家に婿入りしろと言われて断ったりしたら、俺はジジイを激怒させることになるんだよ」


「激怒!?」


「ああ、それだけあんたの家に恩義を感じてるって意味だな」


「何それ、馬鹿馬鹿しい」


「ああ、それは俺も同感だ」


ニコッと笑う彼と、初めて意見が合った気がする。

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