お見合い相手は、アノ声を知る人
あーどうしよう。お見合いを断る為に彼を呼び止めたのに、ちっとも話は進まないで別の方向に向かってる。

だけど……


「…い…行きます!」


決してお酒の誘惑に負けた訳じゃない。
単純に梨やブドウの入った飲み物を味わいたいだけ。


「よし、決まり。だったら出ようか」


「えっ…ちょっと…」


サッと立ち上がり、追いかけようとした。
だけど、慣れないフカフカの絨毯に爪先を引っ掛けてしまい、ドン!と勢いよく背中に顔をぶつけた。


「…おい、大丈夫か?」


振り向いた彼は驚くような顔をして見下ろしてくる。
至近距離にある眼差しに背中を伸ばして、「平気」とすぐに立て直した。


「あんたって奴は、目の離せない面白さがあるな」


間近で笑いかけてきて、そのままぎゅっと手を握って歩きだした。


「何すんの!」


馴れ馴れしいからやめて…と腕を手引いても、彼の手は解けることもなく繋がってる。


「また背中に追突されても嫌だろう。それくらいならまだ手を持ってた方が安心だ」


尤もらしい理由を付けて歩く。

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