お見合い相手は、アノ声を知る人
レストランの支払いは当然のようにカードで済ませ、それを見ながら、この人とは縁があっても離れ過ぎてるな……と思ったーー。




ホテルの最上階にあるレストランを出て、エレベーターで真っ直ぐ下に降りて行く。

美味しいお酒を出す店というのは地下にあるらしくて、そこは自分の行き付けの場所なんだと彼が教えてくれた。


「週一くらいで通ってるかな。バーテンと気が合うもんだから、つい飲み過ぎるのが難点なんだけど」


グラスワインでは酔えなかったらしく、プライベートを少しだけ明かしてくる。


ふーん…と言った後で、いいの?と思った。
私をそこへ連れて行ったら、他の女子と来た時にあれ?とか思われたりしないのかな、と考えた。


(…あっ、そうか。これまでにもいろんな女子と行ってるんだ、きっと)


今更私と行ったからって、別に不思議には思われない。だから、この人もこんなに堂々としてるんだ。


納得してるとチン…と気の抜けるような音を立てて地下一階に続くドアが開く。

私を信用してない彼は歩き出すと同時に手を握り、躓かないかどうかを確認するよう振り返った。


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