恋するオフィスの禁止事項 ※2021.8.23 番外編up!※
桐谷さんに追い付こうって考えてる方が図々しいのかもしれない。
でも、早く一人前になって桐谷さんの役に立てるようにならないと、先輩だけがどんどん先に行くばかりで、今以上に遠い人になっちゃうんじゃないかって不安になる。
きっと先輩はどんどん出世して異動するんだろうし、また遠くに行ってしまうことも当たり前。
私にはどうしようもないことなのに。
それなのにどうしてこんなに寂しく思うんだろう。
「水野」
「あっ、はいっ」
「大丈夫か?もしかして自信なくしてんの?」
先輩はうつ向いている私の顔をさらに下から覗き込んできて、私はパッと顔を背けた。
先輩はこんなふうに暗い顔をして後ろ向きになる後輩なんて、きっと好きじゃないと思う。
分かってるけど、それでもなかなか気持ちを建て直せなかった。
「そりゃあ、なくしますよ……先輩みたいになれたらなって思ってるのに、全然追いつけないし……」
「はぁ?追いつく必要ないだろ。それにリフレシリーズのことなら、俺は生活雑貨部門には二年半だけど、その前だってインテリア部門にいたんだ。そっちで商品開発をある程度経験してからのシリーズ企画だったんだから、水野みたいに本部配属半年の新人だったわけじゃねーよ。そこは比べたって意味ねーだろ」
「そうですけど……」
でもそれじゃあ、この差は埋まらないままだ。
どうしたらずっと先輩と同じ場所にいられるのかな……。
「このままじゃ、先輩が私を置いてどんどん遠くに行っちゃうじゃないですか」
「……水野。お前それどういう意味」