a bedside short story
11th.Aug. 山
写真を再び全部並べてみる。
その中に、山の写真を見つけた。

……山って、夏?
夏山登山とか言うからかしら?

今日はちょうど山の日だし、それに決めてみた。


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美味しいと評判のラーメン屋さんが、山の日にちなんで割り引きすると言うから、彼氏と二人で来てみた。
ランチタイムを外して来たけれど、割引のせいなのか、元々の人気なのか、おやつ時間になっても行列はあまり減っていなかった。

退屈に任せて、彼氏に遊びを振ってみる。

「ねえ、しりとりしよう?」
「は? どうしたんだよ、急に?」
「だって退屈だから」
「スマホは?」
「もう、一通り終わったし、目が疲れた」
「しゃーねーな。子守してやるか」
「失礼なッ!」
「で? 何から始めんだ?」
「山の日にちなんで、『山のようにあったら嬉しいもの』がテーマね」
「すんげテーマだな……」
「そうだなー。始めは、『お金』!」
「いきなり1番シビアなの来たな。ね、か……『ねぎ』?」
「え? ねぎ好きだったの?」
「そんなに好きってほどでもねえけど……。あんまり思いつかなかっただけ」
「なら安心した。初耳だったから驚いたわ。で、ぎ、ね……あ、『銀貨』」
「またカネの類いだな。か……『カツ』」
「つ……『通貨』」
「いい加減、カネから離れろよ。か……ってか『カネ』?」
「結局お互い離れてないし。ね……ネギは言われちゃったから……『猫グッズ』」
「俺は山のようになくていいけどな。ず……」
「す、でもいいよ」
「ず、か、す……。あ、『寿司』!」
「確かに! いまお腹空いてるしね。じゃ、『シュウマイ』」
「『イクラ』」
「『ライス』」
「『スイカ』」
「『釜飯』!」
「なあ、そろそろ終わりにしねえ? 食いもんばっかで余計に腹減る。もうすぐ呼ばれるし」
「じゃあ『ん』で落として」
「まためんどくせえことを……。で、なんだって?」
「釜飯のし、だよ」
「しんなんて無いしなあ……。『白和え』?」
「地味に渋いとこ来るよね。じゃあ、食べ物から離れて『笑顔』でどうだ! キレイな回答でしょ!」
「お……。お、で始まって、んで終わるもの……。あ」

もう、次で呼ばれる、というところで彼氏の目がキランと光った。

「『お前との時間』。これ以上の答えはないだろ。あ、空いたぜ。ほら行くぞ」

なんかうまく丸め込まれた気がする。


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残り、あと20枚。
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