所長による小動物系女子の捕獲計画

莉乃side

「わぁーっ!」

うねうねと続く山道を抜けた先に見える建物に声が出た。

いくつも塔を持つその姿は中世ヨーロッパのお城を思わせる。日本のしかも買わな山奥にポツンと建っているのは不思議だけど、目は釘付けになる。

優美というより、質実剛健って言葉が似合いそうな石造りのそれは、周りに高い塀があって容易に人を受け入れてくれなそうだ。

「なんか、仲良くなるのに時間かかるタイプっぽいですね」

どう評していいか分からなくて、妙な表現になってしまったが、見上げた多和田さんは面白そうにしただけで揶揄ってはこなかった。

「そう?意外とそうでもないんだよ」

「そうなんですか?」

「百聞は一見にしかず、だ。行こう、莉乃」

当然のように私の手を握って歩き出す多和田さんに付いて行きながら、私の心中は複雑。きっとさっきの妙な表現だってそのせいだ。


手を繋ぐのも名前呼びも多和田さんの中で確定なのか、車を降りてからもそのまま。急に近くなった距離感と、拒否反応が出ない自分に戸惑っている。


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