所長による小動物系女子の捕獲計画
麓にお祖父さんの家があって、遊びに来るたびに少しだけ見えるこのお城が気になっていたらしい。ある日、一人で冒険に来たのだと、多和田さんが照れ臭そうに教えてくれた。

「たまたま門が開いてたからそのまま忍び込んで。アドルフに会った時は幽霊だと思ってビックリしたよ」

「それはこっちのセリフだ、ヒロト。まさか小さな侵入者が私を見て泣きべそかくとは思わないじゃないか」

「なっ!泣いてないはないよ。それはアドルフの記憶違いだ」

「いーや、泣いてたね。目に涙をいっぱい浮かべて必死に睨みつけてた」

「浮かべただけなら泣いてないだろ。泣くっていうのはポロポロ涙零すことだ」

「あーあ、そんなムキになって。ヒロトはまだまだ子供だなぁ。そんなんじゃプリッカー賞も貰えないぞ?」

「え?プリッカー賞って‥‥」

二人のコントみたいなやり取りを笑っていて、引っかかった。プリッカー賞を知ってるって事は、

「そう、アドルフは建築士なんだ」
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