Memory Puzzle
だけどまだ、養子という言葉が自分からかけ離れていて自分の事のように考えられなかった。
家に帰れば、何時でも皆が迎えてくれる。
男子の部屋をノックすれば何時でも雪斗に会うことが出来る。
莉久、幹人、梨々花、美花、彩さん、お父さん、秋、雪斗。
記憶がないって分かっても、誰一人として放っといてはくれなかった。違う、誰一人として自分を見捨てなかったんだ。
その事に気づいたのは、失ってしまうと分かった時だった。
時音は、トイレに駆け込んだ。
だって、誰にも涙を見られたくなかったから。
「家族って何?」
そう思った。
やっと泣き終え、部屋に戻った時2人が駆け寄ってきた。
「なんで泣いてるの?!なんかあった?」
家族には…、嘘はつけないらしい。
「養子に行くかも知れない。」
2人は黙った。
「そっか。複雑だね。明日会うの?」
先に口を開いたのは梨々花だった。
「うん。だから、学校休むんだ。」
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