これを愛と呼ばぬなら
「学生の頃から、男の人につきまとわれたりすることが多くて、怖い目にあったりもして。誰かに相談しても、私が思わせぶりなことしてるんじゃないかなんて言われて……」

 私を傷つけようとした人、信じてくれなかった人。過ぎた記憶が、頭を掠める。胸に痛みが走って、思わずきつく目を閉じた。

「……昔、家庭教師の先生に乱暴されそうになったことがあるんです」

 発した声は、微かに震えていた。

「その時は未遂ですんだんですけど、それ以来、男の人からそういう目を向けられると体が竦んでしまって。私がちゃんと嫌だって言えないのも悪いんですけど……」

「それは違う」

 きっぱりと新井さんが言った。驚いて顔を上げると、新井さんは真剣な瞳で私を見ていた。

「君は少しも悪くない。悪いのは、相手の方だ。君の気持ちも考えず、無理強いしたりつきまとう方が圧倒的に悪いんだよ」

「新井さん……」

 男性の気を引くような見た目をしている自分が悪い。逃げてばかりではっきりと声にできない自分が悪い。私がこんなふうだから、ひどい目に遭っても仕方ない。

 ……ずっとそう言われてきたし、私もそう思い込んでいた。

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