これを愛と呼ばぬなら
医務室を出て、私は新井さんと共に地下駐車場へと向かった。
体調も戻ったし、自分で帰れるからと断ったのだけれど……。
「新井さんにそんなことさせられません」
マンションまで私を送ると言ってきかない。
「それは俺が社長だから? それなら尚のこと、社員の安全を守るのは社長の大事な役目だ」
そんな無茶苦茶な、と思ったけれど、聞いてくれそうにない。
私はもう説得するのを諦めて、大人しく送ってもらうことにした。
「そういえば、どうして新井さんが受付でのできことを知ってたんですか?」
社長だからって、社員同士の揉め事までいちいち把握できるわけがない。
「ああ、俺は中條から連絡を受けたんだ」
「中條さんから、ですか?」
社長秘書がなぜ受付でのトラブルまで把握できたんだろう。疑問が顔に出ていたのだろう。新井さんは私を見てふっと微笑むと口を開いた。
「あいつは社内外にアンテナを張ってるんだ。異変があればまず中條に情報が入る。そしてその情報をどこへ伝えるべきか瞬時に判断するのも、あいつの仕事なんだ」
「そうなんですか……」
それで、なぜ今回のことが社長である新井さんの元へ伝わったのだろう?
よくわからないけれど、きっと私には計り知れない事情があるのだろう。そう思って、それ以上深く突っ込むことはしなかった。