きみの見える景色には桜とわたしであってほしい。
駐輪場では女の子たちが塊でいて、何か話し込んでいる。


いわゆるカースト高めの女子というものは、声がでかい。


いや、わたしが地獄耳なだけか。


幸か不幸か、話の内容が丸聞こえだった。


「マナ、もう泣かないで」


マナと呼ばれるその人は嗚咽を漏らし、泣いていた。


いつもは強気のあの子が、何があったというのだろうか。


「あんな人、すぐ忘れよう!もっといい奴いるじゃん」


周りの慰めの言葉は止まらない。


当の本人は、聞いているのかいないのかわからなくて、うつむいたままだ。


そうか、振られたのか、彼女は。


これ以上聞いているのは申し訳ないと思って、わたしは勢いよく自転車をこぎ出した。


また一つ、告白する勇気が失われてしまった。


噂というものは、怖い。


あとから塾の友人に聞いてしまった。


彼女は、わたしの好きな彼に、振られた。

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