41才の中学2年生

オレの席は特等アリーナ席(教壇の真ん前)


「ちょっとぉ~っ!何、このガラスはっ!」

あ"ぁ~っ!この声は?

担任の佐伯瑠璃子(さえきるりこ)、国語の教師で30才、独身。

んー、と確か周りの先生が立て続けに結婚して、適齢期を過ぎて結婚相談所に行ったとか誰かウワサしてたっけな、誰だっけ?

この先生、顔は悪くない、だからと言って良くもないw

スタイルも悪くない。
だからと言って良くもないw

中肉中背、童顔で髪はショートカット、目はクリクリっと二重まぶたで、輪郭は丸い。

おまけに声も年の割にはロリっぽいってんだから、ケッコー生徒からは弄られてたような気がしたなぁ、いや~ホント懐かしい!

この先生、結局結婚したんだっけ?

どうだったかなぁ…確かオレたちが卒業したと同時に教師を辞めたみたいだけど、その後の消息は不明で、同窓会にも出席しなかったからなぁ…

先生「誰っ!この窓ガラス割ったのは?」

オレ「チャッピーでーす!」

チャッピー「えっ?オレ割ってないよ!」

オレ「ウソつけっ!テメーが椅子投げて割ったんじゃねえか、おい!」

教室内がザワザワし始めた。

ホントなら龍也って正直に言えば良かったんだが、当の本人はまだ失神KOしてるし、おでこに【肉】って大きく書かれてるからな。

おまけにチャッピーを嫌ってるヤツはいっぱいいるし、この際、犯人はチャッピーにしちまえw

先生「加藤くん!何で椅子なんか投げたの!どうするのよ、こんなに破片が散らばって!早く掃除しなさいっ!」

ギャンギャン声を張り上げて先生は怒鳴っていた。

『チャッピー、早く破片片付けろよ』

『さっさとやれよ!』

『ケガしたらどうするのよっ!』

『モタモタしてねえで、早く掃除しろよっ!』

『ザマーミロ、チャッピー!』

今までテメーが龍也を後ろ楯にして散々人に迷惑かけたお返しだ!

チャッピー「オ、オレじゃねぇよ…」

チャッピーは涙目になりながらガラスの破片を塵取りに集め、ゴミ箱に捨てた。

『おい、アイツ泣いてるぞ』

『ダッセーw』

『クスクスクスクス…』

…これでチャッピーもデカイツラ出来ないだろう。

うん、よくやったオレ!

これは決してイジメではない!
むしろそれを止めさせるように懲らしめたのだ!(しつこいようだが…)

先生「はい、じゃあ改めて授業始めまーす」

おぉ、この授業を受ける雰囲気!
懐かしいなぁ、おい!

…って今思い出したんだけど、オレの席ってどこだ?

あれ?確か廊下側だっけ…それとも窓際だったかな?

先生「山本くん、何してるの?早く席に着きなさい」

…いや、席に着きたいんだけど…オレの席どこ?

先生「何してるの?早く席に着きなさい!」

えぇ~っと…

オレ「あの、先生。オレの席って…どこでしたっけ?」

先生はいきなりバンっ!と出席簿を教壇の上に叩きつけた…キレたか?
いや、キレてないですよ、って言ってくんないかなぁ…

あぁ~こりゃ怒られちゃったかな?

【こりゃ!】

また煙と共にジジイが現れた!

オレ「あ、ジジイ…っうぎゃ~っ!頭が、頭が痛ぇ~っ!」

ヘアバンドがギリギリと頭を締め付けるっ!

『おいおい、今度は智がおかしくなったぞ』

『大丈夫?なんかヤバくない?』

『オレの席どこってwアイツ思いっきり先生からかってんじゃんw』

ホントに知らねえっつうんだよ!
しかもジジイ!いきなり出て来て頭締め付けるんじゃないっ!

【お主、何だかんだ言い訳してあの少年をイジメてるじゃないかっ!何たる卑怯者っ!】

オレ「違うよ、ジジイ!アイツは金魚のフンみたいなヤツで、皆に嫌がらせしてたのを、龍也と一緒に懲らしめただけだって!」

ったく一部始終見てから判断しろってんだったく!

【うぬ?そうか、そうであったか。ならば良し!】

てな事を言ってまた煙と共に消えた…

オレ「いきなり現れて頭締め付けるんじゃねえ!ったくスゲー痛ぇんだぞ、このヘアバンドは!」

『おい、智誰に話し掛けてんだ?』

『山本くん、霊が見えるのかしら…』

『マジ?あの豹変ぶりといい、何かに取り憑かれてんじゃん?』

『いやぁ、怖~い』

ザワザワザワザワザワザワ…

ザワザワってカイジかよっ!

あぁ、このジジイの姿、オレしか見えないってのが腹立つなぁ!

先生「山本くん…」

オレ「あ、はい…」

何か言われそうだ…

先生「貴方、自分の席が解らないって、からかってるのかしら?」

ヤベーよ、先生の目がマジだょ!


…んん?女子が座ってる席の隣だと指差してる。
おぉ、あの席かっ!成る程、誰だか名前忘れたがサンキューっ!

…って、教壇の超目の前じゃんか!

オレ、こんな特等アリーナ席に座ってたのか?

今日1日、疲れそうだな~…

あぁっそうだ、思い出した!オレの隣は中野恵(なかのけい)

確か、オレが好きな女子だった…

あぁ~あの淡い記憶が甦ってきたぁ~っ!

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