はたらかなくても、はたらいても君が好き
「どうぞ…座って下さい」
「はい…。失礼します…」
私は黒井秘書に示された向かいの席に座る。
今は昼食時ではないため、他の人は誰もおらず、居るのは私と黒井秘書のふたりだけだ。
「あの…話って…」
「私は“6階の食堂に来て下さい”とさっき君に言いましたよね」
「はい…」
黒井秘書のこの顔…。
私が増月社長とキスしているのを見た後、少しだけ見せた顔だ。
厳しい顔…。
「なのに、君はすぐに食堂には来ず、荷物を置きにいった。
私を馬鹿にしてるんですか?」
「そんな…私は馬鹿になんて…」
「まぁ、馬鹿にされるのは別にいいでしょう…」
「私はしてません…」
「どうして君は社長のキスを受け入れたりしたんだ」
「それは…」
「君は社長の事が好きなんですか? いや、正確に言えば好きになったんですか?」
「私は…」
「まぁ、社長にキスされて、好かれているって分かったんです。好きになっても仕方ないでしょう…」
「黒井さん…」
理解して…くれてるんですか?
「でも、社長の事は諦めて下さい」
えっ?
「それと私の名前を気安く呼ばないでもらえますか?」
「すいません…」
「全く…こんな事まで言わないといけなくなるとは、想像もしてませんでしたよ…。
君なら自分の立場くらい、理解していると思ってたんですがね…」
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