はたらかなくても、はたらいても君が好き
「悪いなぁ。お茶配りをしてもらったのに、片付けまで頼んでしまって…」
申し訳なさそうにそう言うのは、企画部部長の近下(ちかした)部長。
「いえ、仕事ですから」
「遠峰、怒ってなかったか?」
近下部長は遠峰部長と同期だ。 
『馬場!!!!
あんた私の電話に勝手に…』
「怒ってました…。遠峰部長のデスクの電話を勝手に出たので…」
「ここの片付けの仕事を引き受けた事の方がもっと怒ってなかったか?」
そういえば…。
『馬場!!!!
あんたは部長じゃないでしょ!!!!
あんたは別の仕事を』
『待ちなさい、馬場!!!!』
「私にこの仕事をやらせたくなさそうでした」
「やっぱり…」
「近下部長。遠峰部長と何かあったんですか?」
「お茶配りの仕事の件で、遠峰に怒られたんだよ」
「怒られた? 近下部長が? 何故ですか?」
「何故って…。馬場、お前のために決まってんだろ」
「私の…ため?」
「ああ。お茶配り、大変だっただろ?」
「えっ? まぁ…。15分しかなかったので…」
「そう。その15分で怒られたんだ」
『何でもっと早く電話して来なかったのよ!!!』
『悪い…。会議の準備でバタバタしてて…』
『忙しいのは分かる。分かるけど、お茶配りは簡単じゃないのよ? お湯を沸かすの! でも、すぐにお湯は沸かないでしょ? それに! 総務部は7階、第3会議室は13階。タイミング良くエレベーターが来ればすぐに着けるけど、来なかったら階段で行く事になる。6階分を駆け足で上がらないといけないのよ?』
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