【BL】お荷物くんの奮闘記


----------



「……この馬鹿弟子が。使うなって言ったそばから使いやがって」


 この世界では、魔力値を超える術を発動させると、体力――生命力が魔力値として置き換えられて消費される。


 蘇生を終えたリュータの体の上で、意識を失った不肖の弟子を見下ろした。


 このままほっときゃリュータは完全な熾天使に戻れたのに、人の身に押し戻してどうする気なんだ。


「まあ、後始末くらいはしといてやるか」


 一応、オレの体使われて起きた事件だし。リュータのおかげでコアを壊され見事に灰になった自分の骸の最後を思い返し、肩を竦める。


 気絶しているユウジの額の上に乗る。手を着くと、するりと内側に進入できた。やはり、弟子の体は適合率が高い。


 弟子が体のあちこちに勝手に作った傷のせいで身体中痛むが、動けないほどではない。ユウジの体で立ち上がり、飛行魔法で上空へ飛び上がった。街で触発された魔の者は、未だ好き勝手暴れているようだ。


「……大賢者の力はおまえらに分配したって意味なんかねえんだよ。加護なわけがあるか」


 こちらから呼びかけるだけで、魔力は本来の持ち主――大賢者の下に簡単に集った。吸収して、一時的に魔力値に変える。


「返してもらうぜ。わざわざオレの死体から抽出してくれた残りっかすの力」


 集めた魔力で、復元魔法に水属性を付加して融合魔法を作り出す。


 破壊されつくした街と、倒れて動かなくなった人々を包むように魔力の込められた雨が降り始めた。
< 103 / 394 >

この作品をシェア

pagetop