【BL】お荷物くんの奮闘記
「私も前衛に入りましょう」


「悪い、ノア頼む」


 足場の悪い上り階段で、三人がそれぞれ前に出た。

戦闘を早期に終わらせるには、前衛が時間を稼いでくれている間に地属性の広範囲魔法で一気に決着をつけるのが最善の方法だが。


 やばい、練習する暇なかった。


 空間を限定して架空の岩雪崩を起こす地属性上級魔法。

師匠から引き継いだおかげで、知識としては頭に入っている。限定された空間が術のモーションの終了とともに解除されれば岩は消えるが、物理ダメージは受けるというもの。

大賢者のオリジナルスペルではなく魔法使い職の上級者には一般的に広く使われている魔法だ。


 咄嗟にスマホを確認してみる。頭に知識はあるのだが、ステータスガジェットには表示されていない。オリジナルスペルでもないのに表示されていないということは。


 うわめんどくせえ! 習得してない扱いか! そりゃそうだよな攻略本買ってもゲームデータのレベルは自力で上げなきゃそのままだもんな!


 これ習得してないのにいきなり使えたら天才なんじゃ? と思わなくもなかったが、そんな危ない橋を実戦で渡るわけにはいかない。

というか失敗したらめちゃくちゃ恥ずかしい。


 思考を切り替えて、今ある手札で乗り切ることに重点を置こう。

水属性は避けるとして、火属性または地属性の魔法で自分が使えるものを頭の中で並べてみる。

通常術技とオリジナルスペル、どちらにも効果の高そうな術が思い浮かばない。


 いや待てよ。単純に雷はまずいからという理由で水属性を避けていたが、氷ならどうだろう。

確か純水は絶縁体、少しでも不純物質が混ざると導体になるが、溶けない氷ならイオンが動けないとかなんとかでほとんど電気は通さなかったはず。

常温で溶けない氷の再現はできないが、魔法で作られた氷なら溶け出すまでに時間がかかる。
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