【BL】お荷物くんの奮闘記
 もともと圧縮向きの属性であるがゆえに、単体攻撃用の氷結魔法の消費MPは低い。

これだ。さっと初歩の氷結魔法を圧縮して構成し、ノアが対峙している魔物に撃ち出した。

斧は凍り付き、その場にごとんと落下する。大きな音を立てて階段を転げ落ちていった。


「この方法ならショートカットできるな」


 続けてあとの二体にも氷結魔法を撃つ。

大技を習得していないことに気付いていなかったというトラブルが好転したおかげで、僅かな消費MPで短時間決着となった。

でももうこんなハラハラするのは勘弁だ。後でちゃんとオリジナルスペル以外も練習しておこう。


「広範囲魔法を使われるかと思っておりましたが、まさか凍らせて戦闘を回避するとは……!」


 うん、使えなかっただけなんだけどな。単純な戦法にも関わらず、ノアが大げさに感動している。こちらもだいぶフィルターがかかってるようである。

リュータは事情を知ってか知らずか、嬉しそうににこにこしている。

そしてこちらの行き当たりばったり具合がなんとなく読みとれたのか、ヴェルターが生暖かい目で見つめてくる。おまえ言うなよ絶対言うなよ。


「今の戦闘で怪我は? 先に進んでも平気か?」


「みんな大丈夫だよ」


 リュータが二人を振り返って答えた。見たところ問題なさそうである。
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