【BL】お荷物くんの奮闘記
 引き続きお供したいのですが、と名残惜しげな彼をさっさとあちらに向かわせるため、例のてるてる坊主をひとつ拝借して「人手が必要になったら呼ぶからスクロールで駆けつけてくれ」と耳打ちしたのも後押しになっているようだ。


 この後は水雹の神殿に足を運んでみると話をしたところ、ヴェルターは一度本国に戻るとのことだった。今回の件についてうまく言っておいてくれるらしい。

これまでデレなどほとんど見受けられなかったヴェルターの口から、ひと段落したらまた本国へ来るといい、と別れ際に出てきたのには驚いた。


 二人と解散して、リュータと二人で東国を出立する。


「また二人旅だね」


「だな。水雹の神殿なんだけど、オレの記憶じゃ中央都市あたりになかったか? 輝炎の神殿が中央都市よりもうちょい南だったろ確か」


 しかし、以前中央都市に足を運んだ時にはそれらしい建物は見当たらなかった。記憶とはまるで違う風景になってしまっていたのはウリエルの暴走によるものだとしても、地表に神殿の一部すら露出していないというのは妙な話である。


「正直、話し合いで済ませてレツとの戦いは回避したいところだけど。オレあいつを説得できる気しねえわ」


 一見めちゃくちゃなように見えるが、独特の筋みたいなものが通っていて、それに沿って行動しているように思える。

ああいうタイプは持論がしっかりしているから、完全に納得させなければ交渉の土俵にすら立てないのだ。


「話し合いといえば、ガブリエルの方もだな。力を借りたいだけだから、戦いにならないならそれに越したことはないんだが」


「おれ、会ったら言ってみるよ」


 リュータが真面目に拳を握る。天使同士で何か分かり合えるようなものがあればいいのだが、先のミカエル戦を思うとこちらも難しい気がする。
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