【BL】お荷物くんの奮闘記
「では、おまえもこの場で私を倒し、宝玉に変えて持ち出せばよかろう」


 交渉決裂だ。ガブリエルによって生み出された吹雪がフロア中に吹き荒ぶ。

触れるものを一定確率で凍結する効果でもありそうな吹雪攻撃は、予めサポート術を用意してくれていたらしいプロフェットの防御壁によって防ぐことができた。

リュータが白亜の剣を抜き、次の魔法を撃ち出そうとしていたガブリエルに切りかかる。ガブリエルは氷の刃を生成し、切り結んだ。


「なんで戦う必要があるんだよ! おれはただ、仲間になってほしいだけなのに……!」


「マムに背き、人の身を得たおまえは違うのだろうが……天使とは本来、精神生命体のようなもの。マムによって設定された場所以外では息さえできぬ」


「なら、もっと別の方法だって……! ユウの頃に呼び出されて、ガブリエルもせっかく安定してきたのに」


「これがおまえの言う、別の方法というものだ」


 剣戟の合間、交わされる二人の言葉でガブリエルがミカエルと違って意志疎通ができる存在だった謎に手が届いた。

ユウの来訪で一度こちらの世界に召喚され、全く異なる言語が基準になっていた天使たちの世界からこの世界に侵食されていったのだ。

リュータはそれを安定と呼んだが、師匠によって実際に書き文字の認識力と外国語知識の欠落で身をもって経験した自分からするとまかり間違っても安定とは表現できない。

わざわざ口にするつもりなどないが、たかだか十数年を過ごした現代とこの世界ではどちらがリュータにとっての基準になっているかなど明らかだ。
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