【BL】お荷物くんの奮闘記
 地上に残された城の方で倒れているだろうレツはプロフェットに任せて、回復したMPを使ってもう一度上空へ飛ぶ。


 崩れ落ちる不安定なフロアで、小さな魔王は瞼を閉ざしたまま笑みを浮かべている。


 これは自己満足だ。倒されることを望んでいたカインにとっては、要らぬ世話かもしれないが。

こちらとしても彼らには散々振り回されてきているのだ。少しくらい勝手をしても文句を言われる筋合いはない。


 MPの余剰分が勿体無いが、蘇生魔法に消費するMPは今の自分の最大MPとほぼ同じだ。

MP回復薬をひとつ使用して、倒れたまま動かないカインに蘇生魔法を使ってみる。


 スマホのステータスガジェットでは、レツの時と同じくやはりパーティーメンバーに彼の名前は表示されない。

けれど、パーティーメンバーでないと回復魔法をかけてやることができないわけではないのだ。それなら、きっと蘇生魔法も有効なはず。


 効果があったのか、スマホですぐに確認できないのがもどかしいところである。

いかにも後衛らしい華奢な体を抱え上げて、転移魔法を構築し始めた。

MP一で転移できる首の魔法陣は確かに便利だが、それゆえ一人分しか移送できないのがいっそう不便に思えてしまう。


 転移魔法を発動させようとしたその時、ふと魔王城のデバックポイントがこの場所にあるような気がして一旦中断する。

発動しかけた移動魔法の魔法陣の上にカインを寝かせて、彼を先に地上へ転送させた。
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