【BL】お荷物くんの奮闘記
「ちょっとおまえ上着貸せ」
「え、いいけど、どうしたの」
荷物を持ったままのリュータから上着を強奪しようとして、物理的に不可能であることにようやく気付いて諦める。せめてとばかりにリュータの後ろに屈んで隠れ、前方で部下に命令をしているらしいヤツをそろりと伺い見た。
「……会いたくない奴に会った」
まだ状況を把握していないリュータが、次は反対側に首を傾げる。人ごみの中でも声が聞こえるほどの近い距離に、嫌な印象しかないヤツ――ヴェルターが居た。
「……神託者の言葉だそうだ。反社会組織を徹底的に撲滅する」
神託者。反社会組織の撲滅。どうやら指名手配の自分を追ってきているのではないようである。
ここまでの旅で特に指名手配犯として騒がれたことはなかったが、こちらは脱獄してきているのだ。気付かれないように、速やかにここから離れる必要がある。
「い、いいかリュータ、オレを完璧に隠しつつごく自然に踵を返せ」
「ええ?」
「頑張れおまえならできる、おまえの顔は知られてない」
「ねえ誰に気付かれないようにしてるの、ユウジ」
事情は後で説明するから早く! と急かそうとしたが、既に手遅れだった。
「え、いいけど、どうしたの」
荷物を持ったままのリュータから上着を強奪しようとして、物理的に不可能であることにようやく気付いて諦める。せめてとばかりにリュータの後ろに屈んで隠れ、前方で部下に命令をしているらしいヤツをそろりと伺い見た。
「……会いたくない奴に会った」
まだ状況を把握していないリュータが、次は反対側に首を傾げる。人ごみの中でも声が聞こえるほどの近い距離に、嫌な印象しかないヤツ――ヴェルターが居た。
「……神託者の言葉だそうだ。反社会組織を徹底的に撲滅する」
神託者。反社会組織の撲滅。どうやら指名手配の自分を追ってきているのではないようである。
ここまでの旅で特に指名手配犯として騒がれたことはなかったが、こちらは脱獄してきているのだ。気付かれないように、速やかにここから離れる必要がある。
「い、いいかリュータ、オレを完璧に隠しつつごく自然に踵を返せ」
「ええ?」
「頑張れおまえならできる、おまえの顔は知られてない」
「ねえ誰に気付かれないようにしてるの、ユウジ」
事情は後で説明するから早く! と急かそうとしたが、既に手遅れだった。