【BL】お荷物くんの奮闘記
「そこでこそこそと、何をしている?」


 部下を解散させたヴェルターが、呆れ顔でこちらに歩み寄ってきた。


「貴様は……」


「ぴゃっ! 人違いです!」


「安心しろ。既に指名手配は解除されている」


「へ?」


 リュータの足元で丸くなっていた自分に、ヤツはあろうことか手を差し伸べてきた。立てということだろうか、恐る恐る伸ばされた手に触れる。

引かれるままその場に立つと、手を伸ばした時僅かに笑っていたように見えたヤツの表情はいつも通り仏頂面に戻っていた。


「ユウジ、知り合い?」


「あー……」


「以前こいつを捕縛した国の者だ」


「えっ!?」


 完全に油断しきっていたリュータが、今まで大事に抱えていた荷物をごっそり全て足元に落とした。


「て、敵!」


「待てリュータ、ひょっとすると今は敵じゃねえかも」
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