君ノいない世界 【完】
見飽きるほど読んだ。あの大切な手紙を。

「リオ、死んじゃってごめんね」

『それだった、思い出した、いくよ!』

ハクは嬉しそうに僕を指さした。僕は黙って頷く。

『死んじゃってごめんね』

「死ぬ前に書くなよ」

『私のことは忘れてね』

「一生覚えてる」

『私はずっと覚えてるよ』

「忘れたら、僕が君のとこにいくよ」

『好きだったよ』

「僕は好きだよ」


過去形なんてやめてくれ。
ここで手紙が終わるのだ。儚い文字が刻まれた手紙が脳裏をよぎる。
とっても短いくせに、僕の心にいつまで居座る手紙だ。
そんなことを思っていると、ハクが今までで一番大きい声を出した。
< 31 / 37 >

この作品をシェア

pagetop