職場恋愛
side 森



ふぅ〜。

一時はどうなることかと思ったな…。

マネージャー・リーダーが不在の携帯コーナーは隙がありまくりで、店長代理が簡単に足を踏み入れられる場所になっちゃった。

どこから情報が漏れたのか、山ちゃんたちが旅行に行ってることを知っていたし、これからやりにくくなりそうで嫌だなぁ。


いつもあの2人がいるから守られてきた場所なのに…。



だめだ。
こういう時こそ自分がしっかりしなくちゃいけないよね。

山ちゃんもたまには息抜きが必要。
頼ってばかりじゃだめだ。





「失礼しま〜す」


数える程度しか入ったことのない家電コーナーの事務所。

店長代理がいるから、なのか。
慣れないから、なのか。


ピリッとした空気を感じる。



「サマーセールの売上表です」



「お前、いつからいる?」



なんだろう、急に。


今年29歳になるから…。


「7年前からです〜」



「じゃあ、藤沢を知っているな?」



ふ、藤沢…。

…知らないわけがない。



僕が入社当時、目標にしていた先輩。
山ちゃんの前の、リーダー。

『うつ』で退職せざるを得なくなった先輩だ。


責任感が強くて、優しくて、男の自分から見てもかっこよかった。



「こっちの逢坂、知ってるよな?」


こうちゃん……?


「…はい?」


なんだろうか。
ものすごく、嫌な予感がして、胸騒ぎがする。


「似ていると思わないか」


それは、つまり…。


「そう…でしょうか」



「ああ、そっくりだ。特別にもいるな、相田とかいう、アホが」


「………………」



「俺はな、ああいう責任感の塊が大嫌いなんだ」


「………………」



「藤沢の次は、どっちだろうな」


…!!

それは、うつを発症するのがどちらか、ということか?


「相田は、俺がどうこうしなくても勝手に辞めるだろう」


…………。



「問題は、逢坂なんだが」


……………。



「どうしたら、手っ取り早くやめさせられると思う?」
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