職場恋愛
『もう一回やろうよ』とねだるつり目さんをよそに卓球場へ戻ると、呆れ顔の山野さんが見えた。


手前側ではゼェゼェ言ってる島田さんがサーブを打とうとしていて、奥側には息一つ乱れていない爽やかな航が構えていた。


「これ外したら負けだぞー」


「山ちゃんしっ!」


「はいはい」



カン コン


最後のサーブを打った島田さん。



航は優しいから、返しやすく打っているらしい。
順調にボレーが続いている。



「俺の勝ちどぅあーーー!」


そんな航の気遣いに気付いていないのか、スマッシュもどきを打った瞬間、山野さんと航がほぼ同時に笑ったのが見えた。


島田さんのスマッシュもどきもなかなかの速さで、しかもちゃんと入っていたのに、超余裕の表情で、それよりも速いスマッシュを決めた私の彼氏様。



なんですか、今のかっこよさ。

素人の卓球でこんなにかっこよく見えるのは航だけだと思う。



「自分から勝負ふっかけといてだっせー」


「たまたま調子悪かっただけだし!」


山野さんに笑われて心底恥ずかしいんだろう。少し顔が赤くなった。



いやぁ、いいもの見れた。
かっこいい。
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