俺様Dr.に愛されすぎて



「藤谷。来てたのか」

「お、お疲れ様です」



声が裏返りそうになりながらも、平常心を装って彼に挨拶をする。

けれど、真木先生はやはりいつも通り変わらない様子だ。



デートした、手を繋いだ、ってあれこれ意識しているのはやっぱり私だけか……。

好きとかいうくせに、そういうところは妙に落ち着いてるんだよね……って、私の経験が乏しいからいちいち反応してしまうだけ?



「あら、真木先生どうしたの?」



ひとり頭の中で呟いていると、宮脇さんが真木先生にたずねた。



「外来のデスクにペンケース忘れたのに気づいて。取りに来ました」

「あぁ!じゃあ持ってきてあげるわね、ちょっと待ってて!」



宮脇さんはそういうと、バタバタと診察室のほうへ向かっていく。



その場で彼と残された私は、ちら、と真木先生を見上げた。

見ればその目の下にはうっすらとクマができている。



「忙しいって聞きましたけど、大丈夫なんですか?」

「あぁ……外来と救急外来、病棟と病棟夜勤が日替わりでなかなか休めなくてな」



た、大変だ……。

聞いているだけで目が回りそうな仕事量に、「はぁ」と間抜けな返事が出た。



「ご飯ちゃんと食べてます?食べないと体持ちませんよ」

「それなりにな」

「それなりじゃダメですよ。忙しいときこそしっかり食べなくちゃ」



もう、と口うるさく言う私に、真木先生は「はいはい」とやかましそうに頷く。



「疲れると食欲落ちるんだよな……あ、でも藤谷の手料理とか食えばすぐ元気になりそうな気がするんだけど」

「は!?」

「って無理か。藤谷料理苦手そうだし」



失礼な!

真木先生を睨むと、けらけらと笑いながら彼は私の頭をぽんぽんと撫でた。



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