俺様Dr.に愛されすぎて
「ごめん」
「え……?」
ごめ、ん……?
まさかそんな言葉を言われるとは思わなくて、それまでの勢いがうそのように言葉がしぼむ。
目の前の修二は頭を下げたままだ。
「あれから、あの時の相手にフラれて、ひとりになって……冷静に考えてようやく、沙織にひどいこと言ったって自覚したんだ。気になる人が出来ても、あの時沙織を傷つけた俺は人を好きになる資格なんてないんだろうって。そう思ったら、恋なんてできなかった」
言いながら、その手はぐっと拳をにぎる。
「実は、前から沙織のこと見かけててさ……謝りたい一心で、偶然装って誘ったんだ」
「え……?」
そう、だったの?
目を丸くして彼を見ると、修二は照れ臭そうに髪をかく。
そして、こちらへ視線を戻し、私の手をそっと握った。
「本当に、悪かったと思ってる。だから……少しでもまだ気持ちがあるなら、俺とやり直さない?」
修二と、やり直す……?
「俺にもう一回、沙織と過ごすチャンスをください」
ぎゅっと、力を込めるその手の感触は骨っぽく、真木先生とは違う、少し小さな手。
単純かもしれない、けれど。真っ直ぐな目で見つめて言う修二の言葉は、とても嘘には聞こえなかった。
彼の言葉のせいで傷ついて、進めなくなっていたのに。
ふざけないで、と、なにを今更、と強く言い返して押し退けてしまいたいのに。
触れる手が、見つめる目が、あの頃の恋人だったふたりを思い出させて惑わせる。
心の中で、過去の思い出と真木先生の顔がぐるぐると巡って、ぐちゃぐちゃに入り混じる。