俺様Dr.に愛されすぎて
「どうかした?」
「いろんな意味で相変わらずだと思って」
嫌味っぽく言ってみせるけれど、それは伝わっていないのか、彼は普通の顔でもぐもぐとオムライスを食べ続ける。
「沙織は変わったな」
「老けたとか言ったら殴るからね」
「老けたっていうか、落ち着いたなーって。綺麗になったよ」
……そんなふうに褒め言葉をさらっと言ってのけるところもまた、相変わらずだ。
変わらなすぎて、さすがに苛立ちが込み上げる。
「……なに『綺麗』とか言って、ヘラヘラしてるのよ」
低い声でぼそ、とつぶやくように言うと、修二はスプーンを持つ手を止めてこちらを見た。
なに笑ってるのよ。
なんで、あんたはあの頃と変わらなくて
なんで、私だけ傷ついて、踏み出したいのに踏み出せなくて
ムカつく、悔しい、腹立たしい。
「あんたの言葉のせいで私はね、あれからまともに恋もできなかったんだから。5年経った今だって、信じたいって思うのに、大切な人の気持ちも信じられなくてっ……」
あの頃なにも言えなかったまま溜まりにたまっていった嫌な感情。それが決壊するようにあふれ出る言葉を、止めることなく言い放つ。
すると修二は、それまでへらへらとさせていた顔を真顔にして手元のスプーンを置いた。
一瞬の間に、もしかしたら言い返されるかもしれない、また笑われるかもしれないと嫌な想像が頭をよぎった。
けれど次の瞬間、修二はその場に座ったまましっかりと頭を下げる。