俺様Dr.に愛されすぎて
「っ……うう~……」
子供のようにボロボロと泣き出す私に、永野くんは少しギョッとする。
通り過ぎる周囲の人々は何事かとこちらを見ていくこともあって、どうしていいかわからなそうに戸惑った。
そして慌ててポケットからハンカチを一枚取り出すと、それを私に差し出してくれた。
「藤谷さん、お互い暇になったことですし遊びに行きません?」
「え?」
「せっかくの誕生日ですから、楽しまないと!藤谷さんの、30歳を祝って!」
ね、と笑って私の腕を引き歩き出す。
彼なりに私のことを気遣ってくれているのだろう。
年下に気遣われるなんてとほんの少しの惨めさも感じるけれど、その親切さに嬉しいと思う方が大きい。
「……だから28だってば」
小さく笑って、彼に続いて歩き出す。