俺様Dr.に愛されすぎて
「寂しいのは、俺も同じだ」
「そう、なんですか……?」
「もちろん。沙織に会えないと寂しくて、つらくて、気付くとまた沙織のことばっかり考えてる。昼間の電話のあとも、強がる沙織の寂しげな声が耳から離れなくて、気付いたら駆けつけてる自分がいた」
真木先生はそう腕の力を少し緩め、私の顔を見つめた。
「会えない時間が寂しいのも、会えればこんなに嬉しいのも、沙織だから感じる気持ちなんだよな」
言葉とともに彼がこぼす微笑み。
それは優しく愛おしく、それまで堪えていた涙が、ぽろっとこぼれてしまった。
彼はそれを指先でそっと拭うと、ひと気のない夜の住宅街の片隅でそっとキスをした。
「……遅くなってごめんな。誕生日、おめでとう」
会えない間に積もり積もった寂しさも、彼に抱きしめられるだけで溶けてしまう。
そしてそのたび、いっそう思う。
真木先生のことが、好き。大好き。
「……あ。あとそろそろその『真木先生』ってやめろよ」
「なんでですか?」
「病院の外では『先生』じゃないし。沙織もいつか『真木』になるかもしれないしな」
え?それって……?
一瞬意味を考えて、理解し、驚き照れて、と表情をコロコロ変える私に、彼はまたおかしそうに笑った。
愛しい彼とふたり、甘い生活が始まるのは、ほんのすこし後の話。
end.