俺様Dr.に愛されすぎて
「藤谷」
「は、はい!?あの、真木先生っ……」
目の前の彼はいつも通り落ち着いた様子で、こちらへ手を伸ばすと、私の肩を掴んで見つめた。
え!?なに、その目。
肩を掴んで、逃さないように、向き合うように見つめてくる。
その行動に当然ドキドキしないわけがなくて……。
「お前、甘いもの平気?」
「へ?」
あ、甘いもの?
見つめたまま問いかける彼に、目を丸くして首をかしげた。
いきなりなんの話かと困惑していると、真木先生はとりあえず私をそのまま近くのソファに座らせ、自分は冷蔵庫の方へと向かう。
そしてなにやら白い箱を取り出したかと思えば、それを目の前のテーブルに置いた。
「それは……?」
白地の箱に赤い縁取りがほどこされたその箱を彼が開けると、中にはショートケーキとチョコレートケーキのふたつが入っていた。
甘いクリームの香りが、つい先ほどまでの緊張感をどこかへ吹き飛ばしてしまう。
「ケーキ、ですか?」
「あぁ。貰ったんだけど、さすがに2個は食えないから。せっかくだし食べて行けよ」
真木先生は、そう言いながら、どこからか取り出した紙皿にケーキをのせる。
「いいんですか?」
「あぁ。どっちがいい?」
いいのかな、と思いつつ、お腹は空いているしケーキは美味しそうだし、誘惑する気持ちのほうが強く迷いはすぐ消えた。
チョコレートケーキを指差す私に、彼は紙皿に乗ったチョコレートケーキにフォークを添えてこちらへ差し出す。