俺様Dr.に愛されすぎて
「着替え、終わりました」
その言葉を合図にするように、真木先生はこちらを振り向く。
彼は私をじっと見つめて、こちらに近づくと、そっと手を伸ばす。
そしてその指先はパーカーのファスナーをきっちりと上まであげきった。
「……ちゃんと前締めろ」
低い声で囁いて、その手は私の首元をそっと撫でる。触れられ慣れないところを触れられて、ゾクッと反応してしまう。
思わず漏れた「んっ」という小さな声に、恥ずかしくて慌てて口元を押さえた。
「すみません……あの、くすぐったくて」
「……誰の前でも、そんな声聞かせるのか?」
「え……?」
それって、どういう意味?
静かに問う声に、たずねようとした。けれど、それを遮るように真木先生は私の右腕を引っぱり体を抱き寄せる。
長い腕に包まれて、肺が一気に彼の香りでいっぱいになる。
「ワガママだって分かってるけど、簡単に他の男に触れさせないでほしい。冷静で、いられなくなる」
耳元で囁く、低い声。
なんて言葉を返せばいいかわからず、戸惑うしか出来ずにいる。
「……好きなんだ」
けれど、その迷いも全て包むかのように伝えられる『好き』の言葉。
抱きしめる腕にも、抱きつき返すべきか、拒むべきか、どうしていいのかわからない。
こんな時にも、私は自分の気持ちがわからないままだ。
だけど、抑えきれない感情を精一杯冷静に伝えようとするその声に、愛しさを感じている。
ドキ、ドキ、と聞こえる胸の音は、自分の音にも彼の音にも聞こえた。