俺様Dr.に愛されすぎて
「……あの、もう、行かないと」
その言葉に、彼はぎゅうっと抱きしめる腕に力を込める。まるで子供が『離したくない』と駄々をこねるかのようだ。
けれどこのままではいられない、となだめるようにその胸元を軽く叩く。
「すみません、服今度返しにきます」
渋々、というように離れた腕に、私は鞄と濡れた服を手に部屋を出た。
……初めて見た、表情。
いつもは、笑顔で、凛としている。そんな彼の、動揺。
それがなぜか、嬉しいと感じる自分もいて。
『冷静で、いられなくなる』
……なんて、そんな。
彼のひと言が、また胸をドキドキさせる。
「……はぁ」
パーカーの袖をくん、と嗅ぐと、爽やかな洗剤と真木先生の香りがした。
ずっと、抱きしめられ続けているみたいな、錯覚を覚える。
……思わぬ、幸せの日。
占い1位は、あながち間違いではなかったかもしれない。