俺様Dr.に愛されすぎて
「もしかして、新車ですか?」
運転席に乗る真木先生に問いかけると、彼は頷く。
「あぁ。一ヶ月くらい前に変えたばっか。なのにすぐ調子悪くなって、やっと修理から戻って来たところだ」
そういえば、だからあの日は電車通勤だったんだっけ。
思い出しながら、カチッとシートベルトをとめると彼は言葉を続ける。
「だから、助手席に乗る人は藤谷が初めて」
初めて、なんて……そうやってまた、喜びそうなことを言う。
そして案の定、少し喜んでいる自分が憎い。
素直な反応を表すことはできなくて口ごもっていると、真木先生は笑みを浮かべて車を走らせだした。
窓の外を流れる、病院付近の見慣れた景色。
けれどいつもは運転席から見ている景色を今日は助手席から見ているせいか、違ったものに見えてくる。
ふたりきりの車内には、音楽も会話もなく、ただエンジン音だけが響いている。
「……よかったんですか?」
「なにが?」
「さっきの子の誘い、断ったりして。かわいい子だったのに」
ぼそ、とつぶやくように言うと、真木先生は前から視線をそらすことなく答える。
「いいんじゃない。興味ないし、好みじゃないし」
『興味ない』とばっさりとした言葉。
「それに、俺は藤谷が好きだって言っただろ」
私の、ことが……。
さっきも真木先生は、『俺は俺の意思で、彼女を好きだって思ってる』って言ってくれていた。
繰り返されるその言葉を、丸っきり嘘だとは言い切れない自分がいる。
……だけ、ど。