俺様Dr.に愛されすぎて



「ああやって酔っぱらったフリしてナンパするやついるんだよな」

「へ?そうなんですか……」



ていうか、なんで真木先生が……?

驚いたままの私に、彼はポン、と頭に手を置く。



「つーか、やっと追いついた……お前歩くの早すぎ」



少しあがる呼吸から、急いで追いかけてきてくれたのだと気付いて少し嬉しくなる。

って、なんで嬉しいとか思うの。



「なんですか?あの子と飲み直しに行かなくていいんですか?」



少し揺れた気持ちを否定するように腕を払おうとするけれど、その手は離さない。



「彼女の誘いなら断った。家まで送る」



断った……?

彼女の手をほどいて、来てくれた。そのことに、また心は揺れる。



なんでまた、嬉しいとか思っちゃうんだろう。

単純な自分が悔しくて、よく分からなくて、甘えることが出来ずにその腕を振り払おうとした。



「大丈夫ですから。離して……」



けれど彼はそのままタクシーを呼び止め、強引に私を連れて乗り込んだ。

「池袋方面で」と運転手さんに指示をする間も、その手は腕を掴んだまま。



なんで、追いかけてきて、助けてくれて、強引に腕を引っ張って……。

ついさっきまで、他の女の子と仲良く話していたくせに。

私のことなんて見えていない素振りをしていたくせに。



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