俺様Dr.に愛されすぎて
関係ない、関係ないと思うのに。気づくと彼のことを思ってしまうのはどうしてだろう。
他の子に向けられた笑みが、いや。
……なんでこんなこと思うの、私。
「ちょっと、そこの美人なお姉さん!」
「へ?」
するとその時、突然その声とともに腕を引っ張られ呼び止められた。
なに?と振り向けばそこにいたのはワイシャツに黒いジャケットの、いかにもチャラチャラとした雰囲気の男性。
少し赤らんだ顔と漂うアルコール臭から、お酒を飲んでいるのだろうことを察した。
「な、なんですか……」
「なにしてんの?ひとり?一緒に一杯飲みに行かない~?」
出た、酔っ払いのナンパだ。
よくあることとはいえ、今この最悪な気分のときにされれば余計不快だ。
露骨に嫌な顔をするけれど、彼は気付くことなくへらへらと笑う。
「結構です。帰るので」
「そんなこと言わないでさぁ。ね、ちょっとだけ」
おまけに肩に腕を回し、キスを迫るかのようにさらに顔を近付ける。
なにこの男!顔近いし、馴れ馴れしいし、すっごくお酒臭いし……!
「ちょっと、離してっ……」
遠巻きにこちらを見る人々の中、優しく言ってもきかないだろうと、声を荒らげた。
「おまわりさーん、こっち!悪質なナンパしてる人がいまーす」
その時、突然響いた声に、彼は「え!?」と声をあげ慌てて手を離す。
そして酔っぱらっているとは思えないしっかりとした足取りで逃げていった。
え?だ、誰……?
驚き振り向くと、そこにはどうしてか真木先生がいた。
先ほどの声は彼のものだったのだろう。遠くなっていく酔っ払いを見て、彼は「行ったな」と確認をした。