俺様Dr.に愛されすぎて
「5年前、付き合ってた彼氏は『好き』とか『かわいい』とか平気で言える人で、素直に言えない私はそんな彼を尊敬してたしそういうところが好きだった」
彼はいつも笑って、『沙織が好きだよ』、『かわいいよ』って言ってくれた。
その言葉が嬉しくて、愛しくて、胸が愛であふれた。
けれど、それは長くは続かなかった。
「けど、聞いちゃったんです。彼が友達に話してるところ。私以外にも彼女がいて、『女ってチョロい』って言ってたこと」
たまたま、街で友人と歩く彼を見かけた時に話していた。
『この前の女?あー、キープしてる女のひとりだよ。ちょっと好きだとかかわいいとか言ったらコロッと騙されて、女ってチョロいよなぁ』
おかしそうに笑って、バカにしていた。
そんなの嘘だって、なにかの間違いだって、信じられなかった。信じたくなかった。
けれど、問い詰めた私に彼から返ってきたのは、呆れたような笑いとひと言だった。
「信じられなくて問いただしたら、彼あっさり認めて……『無条件で愛されるほど、自分にそんな価値があると思った?』って笑われた」
特別美人でもない、取り柄もない。
そんな自分が、心から『好き』と思ってもらおうなんて図々しい。
思い出す悲しみを紛らわせるように笑ってみせる私に、真木先生は笑うことなく見つめ返す。