俺様Dr.に愛されすぎて
そっけなくしたくせに、私の指先の動きひとつに、こうして応えてくれる。
その優しさが、愛しい。
「……営業なんて、してないですけど」
「わかってるよ。けど、ああでもしないとふたりきりになれないだろ」
ぼそっとつぶやくように言った私に、彼は前を向いたまま頷く。
「なにか、言いたいことがあるんだろ?」
伝えたい、という気持ちを感じ取ってくれる。
そんな彼の心に惹かれるように、私はその手をぎゅっと握った。
自ら動いたこの手に、彼の手がピクッと反応する。
ひと気のない廊下の端で足を止めると、真木先生も同時に足を止めた。
「……この前は、ごめんなさい」
「え?」
「真木先生の気持ちを信じたくないと思ってるとか、丸っきり疑ってるわけじゃないんです」
信じたいという気持ちがないわけじゃない。ううん、むしろ、そう願ってる。
だけど。
「けど……平気で嘘をつく人を、知っているから。信じることが、怖くて」
あの日の悲しい気持ちを思い出すたび、信じてはいけないと呪文のように繰り返す。
震えをこらえるように、彼の手を握る手に力を込めた。