あなたのことは絶対に好きになれない!
「……嫌いだったからですよね?」

悲しいけど、他に理由なんて思い付かない。
昔の彼は、今の彼と違って誰にでも優しい王子様風の性格ではなかったかもしれないけど、誰彼構わず意地悪をしていた訳ではなく、当時の彼があそこまでいじめていた相手は私だけだったはずだ。

……となると、私のことが嫌いだったからいじめていた、と考えるのが普通だろう。


でも。


「違うよ」

「え?」

「好きだったから」

「はっ……?」

「好きな子ほどいじめたい、ってやつ。俺は、クミのことが凄い好きだったの」


な……何だって?

真面目に話していたつもりだったのにこの場でも私をからかってきて……


と思ったけれど、さっきと同じく、彼の瞳は嘘を吐いているようには見えなくて……。


でも。


「あの頃、クミが嫌がってる顔を見ると気持ち良かったんだよね。普通は、好きな子の笑顔が見たいって思うんだろうけど、俺は好きな子の泣き顔が見たかった」

そう言われて、本気でイラッとした。
あの頃、私がどれだけ毎日苦しんでたか分かってるの⁉︎
毎日泣いてたし、オウスケくんに会うかもしれないって考えたら家から出るのも嫌だったんだよ⁉︎
さっきから〝子供の頃のちょっとした意地悪〟みたいな言い方してるけど、そんな可愛いもんじゃなかったからね⁉︎


……ん? でも待って?
私に意地悪していたことを後悔したんだよね?

じゃあ何で私には今も相変わらず意地悪な態度なんだ?

そう考えていると、彼は突然。


「クミ、今彼氏いる?」
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