あなたのことは絶対に好きになれない!
「というか、実を言うと朝比奈さんが窓口に来たあの日、俺もう既に告白されたんだよね」

「え⁉︎」

この流れで、思わぬ事実の発覚に私は目を見開く。
これから朝比奈さんからのアプローチが激しくなる展開しか考えていなかったのに、もう告白したって?


「な、何て答えたの?」

「気になる?」

ニヤ、と笑って私の顔色を伺う彼の表情は本当に腹立たしい。

…….なのに、彼の言葉を否定は出来なくて。


「…….気になる」

と答える。


……オウスケくんは、自分で質問してきたくせに、「え?」とか聞き返してくるから、私は余計に恥ずかしくなる。



「断ったよ」

そう答えた彼の言葉が、いつもよりほんの少し優しく聞こえたのは何でだろう。


「本当?
……あれ? でも朝比奈さん、帰る時笑ってたよね? あれはフラれた後だったの?」

「諦めないって言ってたからかな。結構ハッキリ断ったつもりだったけど、いかんせんドMだから」

そ、そうなんだ。私だったら好きな人に告白して断られたら、ショックで泣いてしまう。
ドMとは奥が深い……と共にその心の強さに少し尊敬する……。


「でも」とオウスケくんは続ける。


「これ以上アプローチが続くようなら、その時はもっとハッキリ伝えるよ。俺には好きな人がいるから、そちらの気持ちには何があっても応えられない、って」


好きな人、と口にした時のオウスケくんの視線が凄く真剣で。
胸が高鳴って、何故かしばらく彼から目を逸らすことが出来なかった。


そして。


「その方が、クミも安心するだろ」

そう言ったオウスケくんの表情は、またいつも通りの意地悪い笑顔。


……それなのに、私の口からは



「……うん」

という言葉が、自然と出てきた。

私の言葉に、オウスケくんが優しく微笑んだ。
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