あなたのことは絶対に好きになれない!
「確か、家の庭で摘んだたんぽぽを栞にして渡したんだっけ……。
そうか、だから今日の夕方、たんぽぽを見て『懐かしい』って言ったんだね」


そしてあの時の寂しげな表情は、私がその思い出を覚えていなかったからだったんだ……。


すると彼は。



「……嬉しい」

「え?」

「忘れてて当たり前だと思っていたけど、思い出してくれたことは凄く嬉しい」


いつもの意地悪な笑顔じゃなくて、優しく柔らかで、私のことをどこまでも愛おしく見つめるような……そんな温かい笑顔で私を見る。


彼に対しては、何回か胸のドキドキを感じていたけど、その気持ちはなるべく誤魔化そうとしてきた。


だけど、もう誤魔化しがきかなくなってる。

それほどに、


心臓が大きな音を立てた。

頬にも一気に熱を帯びる。



その上。



「その栞、今も使ってるよ」

「え⁉︎」

さすがに冗談だと思ったのだけれど、彼はそう言って、普段仕事で使っている手帳をバッグの中から取り出す。
そしてページに挟まれた栞を私に見せてくれる。


薄緑色の画用紙の真ん中に、たんぽぽがが押し花された栞。

さすがにヨレヨレになってしまっているけれど、この栞は確かに記憶にある。

裏返すと、私の下手くそな文字で〝オウスケくん、おめでとお〟と書かれている。


「は、恥ずかしいなあ、もう」

ついそんなリアクションを取ってしまったけれど……こんなものを見せられたら、彼の気持ちの強さに全身を包み込まれるような感覚に陥った。

心臓のドキドキは治まることを知らない。

こんな感覚、生まれて初めて。


私、私……



「……好き」

思わず、自然に。
だけど確かな本音が口からこぼれた。
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