キミと初恋。
「かすみ」


颯ちゃんの澄んだ声に導かれるように、私はケータイをポケットにしまい、颯ちゃんを仰いだ。


「不安にさせて悪かった」


ヒーローはいつもここぞというところで決めてくる。私は思わず顔を覆った。涙を堪えきれなかったからだ。


「かすみ。そのままでいいから聞いて」

「はい……」

「俺はかすみが好きだから。だから遠慮とかすんなよ」


そう言ってヒーローは私の額に口づけを落とす。

それはまるで何かの儀式のように。


「私は颯ちゃんが好きです。今も、昔もずっと、ずっと……」



……ずっと、何かの呪縛にかかっていたかのように、颯ちゃんの隣にいる事をどこか後ろめたく感じていた。

だけどヒーローがその呪縛を解いてくれた。


「颯ちゃんは本当にヒーローだったんですね」


なんて言ったら、颯ちゃんはふにゃりと笑って私の頭を撫でた。


「逆だろ? それって、かすみが俺のヒロインだからだろ」




……うん、そうだといいな。


優しいヒーローに見合う、ヒロインに……。





【Fin】
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