キミと初恋。
とりあえずこの中身を外に出して、丸ごとカバンを水洗いしてしまおう。


「ちょっとかすみ、どこ行く気?」


後ろから走って追いかけて来てくれたのは、やっぱりりょうちん。


「この泥を校庭に出そうと思って。カバンも洗いたいしね」


カバンを洗う事を考えたら、中庭にある花壇がちょうどいいかもしれない。そしたら水やり用のホースもあるし、土も花壇に捨てれば一石二鳥だ。

そう思って向かったら……。


「うそ……」

「えっ? 今度はなに? ……まじか」


後ろから追いかけてきたりょうちんも、私と同じ光景が目に入ったらしく、さすがにボーゼンとしてるのがよく分かる。

背後にいるりょうちん、その姿が見えなくても、その言葉や声や空気を通じて感じる雰囲気が私に状況を伝えていた。


「花壇、めちゃめちゃじゃん……」


お昼休みまでは正常だったはずの花壇。それが今となっては見るも耐え難い状態だった。

花は引っこ抜かれ、踏み荒らされてる。どうやらカバンに入ってる泥はここのものみたいで一部土が盛り返されていた。

この放課後までの間に、一体誰が……。

いや、とにかく今は犯人探しなんてしてる場合じゃない。先輩には先に帰ってもらうように連絡して、まだ大丈夫そうな花があればせめてそれだけでも救出しよう。


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