キミと初恋。
「なにこれ、やばっ!」


私のカバンの中を覗き込みながらそう言ったのは山下さん。しかも愉快そうに笑いながら。


「斉藤さんは青井先輩のガーディアンだもんねー。色んな人の恨み買ってそうだよね」

「その恨んでる人って、山下じゃないの?」


りょうちんってば私が言いにくい事をズバッと言ってくれちゃう。いや、きっと、あのお昼の一件を見てた人なら誰もが思ったであろう意見だ。


「はぁー? 変な言いがかりはやめてよね。私こんな陰湿な事しないし」

「どーだか」


りょうちんは腕を組みながらまだ山下さんを疑っている。

と、そこにやって来たのは小倉さん。


「あたしずっと一緒にいたけど、彼女じゃないよそれ」

「どーかなぁー? 2人はグルの可能性あるじゃん?」

「疑うのは勝手だけど、証拠もなくそういうこと言うのはどうかと思う」

「だってタイミング良すぎじゃん?」

「だからそれってーー」

「ストーップ‼︎」


不穏な空気を割るように、りょうちん達の間を割って入った私。

とりあえずこれが誰の仕業かはわかんないけど、分かんないものをここでごちゃごちゃ言ってても仕方ない。


「りょうちんありがとう、心配してくれて。これについては証拠も何もないわけだし、私が不特定多数の人によく思われて無いのは事実だから。山下さん、小倉さん、疑ってごめんね」


私は深く深呼吸してから、とりあえずカバンを担いで教室を後にした。


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